「年収の壁」問題、どう変わってきた?
パートやアルバイトで働く際に、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増え、手取りが減ってしまう「年収の壁」。この問題がどのように議論され、変化してきたのか、主要な出来事を時系列でまとめました。働き方や家計に影響する制度の動きを追います。
📝 総括
「年収の壁」問題、段階的な引き上げと今後の議論
「年収の壁」問題は、昭和の時代に作られた専業主婦等を優遇する制度が、現代の女性の社会進出や共働き世帯の増加にそぐわなくなったことから生じています。
この問題に対し、国民民主党は2024年10月、所得税の壁を178万円に引き上げる公約を掲げました。これを受けて、2025年3月末には、基礎控除等の拡大により所得税の壁が160万円に引き上げられることが決定しました。住民税の非課税ラインも110万円に引き上げられます。
さらに、2025年11月には国民民主党が178万円への引き上げを再度要求し、政府・与党は2026年度税制改正で168万円への引き上げを検討しています。2025年12月には、178万円への引き上げに向けた協議が続けられており、低所得者向けの基礎控除への特例措置なども含めて議論が進められています。
📜 タイムライン
「年収の壁」の背景にある制度の誕生
現在の「年収の壁」問題の背景には、昭和の時代に作られた税制や社会保険制度があります。当時は「夫は働き、妻は家庭を守る」という家族の形が一般的でした。そのため、専業主婦やパートで働く女性を優遇するような仕組みが作られました。例えば、年収103万円を超えると所得税がかかるようになり、配偶者控除などもこの年収を基準にしていました。しかし、女性の社会進出が進み、共働き世帯が増えた現代では、この制度が働く意欲をそぐ原因となっています。
国民民主党「178万円の壁」を公約に
国民民主党は、2024年10月の衆議院選挙に向けて、「年収の壁」を実質的に撤廃する政策を公約に掲げました。具体的には、所得税がかからなくなる年収の上限を現在の103万円から178万円に引き上げるというものです。この政策は、労働力不足の解消や、働く人々の家計負担の軽減を目指すもので、大きな注目を集めました。この提案は、最低賃金の上昇率などを考慮して算出された金額です。
所得税の壁が160万円に引き上げへ
2025年度の税制改正により、所得税がかからなくなる年収の上限(課税最低限)が、現在の103万円から160万円に引き上げられることが決まりました。これは、基礎控除や給与所得控除が拡大されたことによるものです。特に年収200万円以下の人には、基礎控除がさらに上乗せされる特例措置が取られます。また、配偶者控除や配偶者特別控除の基準額もそれぞれ123万円、160万円に引き上げられます。この措置は、働き控えの解消や物価高騰による家計負担の軽減を目的としています。
住民税の非課税ラインも引き上げ
2025年度の税制改正では、所得税だけでなく住民税の非課税となる年収基準も引き上げられます。現在の100万円から110万円に引き上げられる予定です。これは、2026年度に支払われる住民税から適用されます。この変更により、より多くの人が住民税の負担なく働くことができるようになり、家計の助けとなることが期待されます。
国民民主党、178万円への引き上げを再度要求
国民民主党は、2025年11月の国会で、所得税の「年収の壁」を160万円からさらに引き上げ、一律178万円にすべきだと改めて主張しました。同党は、最低賃金の上昇に合わせて年収の壁を見直すことを求めています。これに対し、高市総理は、2026年度の税制改正の議論の中で、基礎控除の引き上げについて具体化を図る考えを示しました。国民民主党は、この問題が政治の安定につながるとして、与党との協議を続ける姿勢です。
2026年度税制改正で168万円への引き上げを検討
政府・与党は、2026年度の税制改正で、所得税の「年収の壁」を現行の160万円から168万円に引き上げる方向で検討を進めています。これは、基礎控除と給与所得控除をそれぞれ4万円ずつ引き上げる案に基づいています。また、物価高騰に合わせて2年ごとに税負担を軽くする制度の導入も検討されています。この引き上げは、働き控えの解消や人手不足対策を強化する狙いがあります。
178万円への引き上げに向けた協議続く
政府・自民党と国民民主党は、2026年度税制改正における「年収の壁」の引き上げについて、引き続き協議を行っています。国民民主党は一貫して178万円への引き上げを求めており、自民党側も「178万円を目指して引き上げていく」という合意に言及しています。低所得者向けの基礎控除に特例措置を10万円上乗せすることで、178万円とする案も議論されている模様です。両党は、具体的な金額について今後も協議を続ける予定です。